大手フィットネスクラブに20年間通っているけど昔に比べてサービスの劣化が激しくないですか?
現場スタッフはアルバイトばかりだし、レッスンインストラクターもプロを使わず自社スタッフばかりで回しています。
経費削減も良いですがいくらなんでも手を抜きすぎだと思います!
結論から言えば手を抜くどころか運営企業は大真面目にサービス改革に取り組んでいます。皆さんが満足してくれるようなサービスを本気で考えています。
ただしフィットネス業界は比較的新しい産業です。日々進化(?)を続けています。
その中で既存の会員が求めるサービスとクラブ側が提供したいサービスのミスマッチが起こっていると言えます。
確かに現場スタッフは専門家とは言えないレベルの学生アルバイトだらけであったり、レッスンインストラクターは数日間の養成を終了しただけの人だったりすることもあります。
人員削減が進んでいるのは間違いありません。
しかし、質の低下はボクがフィットネスクラブで働き始めた1990年代から言われていました。それからずっと言われ続けています。
3年前に入会した会員さんも『前は良かった』と言う事があります。
4,000年前から『今どきの若者は・・・』という言葉があったと言いますが同じようなものです。
でも、事実はどうなのか気になるところではないでしょうか?
もし今通っているクラブにスタッフやレッスンの不満があるのならこの記事が役に立てるかもしれません。
できるだけ明確に答えを出していきます。
項目を以下に分けてそれぞれを解説していきます。
- フィットネス業界の歴史
- スタッフの質・教育レベルについて
- レッスンインストラクターのクオリティ
フィットネスクラブに通っている人向けに、クラブ側は何を重視しているのかを20年以上に渡りフィットネス業界に関わっているフラッシュパパが解説します。
※特定クラブではなく業界全体の大まかな傾向となります
フィットネスクラブの歴史
何故フィットネスクラブが現在のような形態になっているのかを理解すれば、問題の本質が見えてきます。
どのように成り立ってきたのかを簡単に説明します。
- 1970年代(黎明期)
大手フィットネスクラブの出店が始まる - 1980年代(成長期)
全国にフィットネスクラブが広まる - 1990年代(発展期)
料金の引下げや営業時間の延長、レッスンプログラム種類の増など多様化が進む - 2000年代(調整期)
各企業の吸収合併による再編、カーブスなどの新業態の出現、ヨガや格闘技レッスンブームなど現在に繋がる流れが出来上がる - 2010年代(多様期)
ホットヨガスタジオ、パーソナルトレーニングジム、24時間型ジム、暗闇系スタジオなどの一点突破型のクラブが広がり競争が激化する - 2020年代予測
高価値・格安大型クラブを持つ海外企業が日本進出、在宅フィットネス・オンラインフィトネスの急拡大
<参考:fitness business 日本のフィットビジネス産業史>
高齢化が進むにつれてフィトネス市場は年々拡大しています。しかし近年はビジネスチャンスを感じた外部企業が最新のテクノロジーとともに続々参入してきています。限られたパイを奪い合っている状況です。
結果、市場の拡大以上に競争は激化しており数十年前よりも既存クラブの経営は難しくなっています。
フィットネスクラブで働くスタッフの質は落ちたのか?
感覚的なものは省き、実存するデータを集め検証してみます。
スタッフの契約形態は3種類
フィットネスクラブで働くスタッフは以下のように分けられます。
フィットネスクラブで働くスタッフの契約形態 | ||
正社員・契約社員 | 店舗マネジメントを中心に経理、トレーナー、レッスンインストラクターなど幅広く行う。 | |
学生アルバイト・パート | フロント、ジム、プール、スタジオの現場仕事を行う。キャリアの長いスタッフはマネジメントを手伝う事もあり。 | |
契約インストラクター・トレーナー | レッスンやパーソナルトレーニング契約のみのプロインストラクター。他クラブとも複数契約を結んでいることが多い。 |
※本記事の主旨からズレるため清掃スタッフは割愛しています
社員とアルバイトの一番の違いはマネジメント業務の割合が大きいか少ないかにあります。
フィットネスクラブの業務は多岐にわたります。
- 売上対策と費用管理
- レッスンスケジュール立案と実施
- 会費請求計算
- スタッフ採用と育成
- クレーム対応
- 機械室管理・マシンメンテナンス
これらのことを一店舗の数名で行います。
社員とアルバイト数の比較から『質』を検証
フィットネスクラブで働くスタッフ数を正確な記録が残っている2004年以降で比較してみます。
正社員 | パート・ アルバイト | インスト ラクター | ||||
総数 | 1施設 | 総数 | 1施設 | 総数 | 1施設 | |
2004年 | 5,970 | 7.1 | 22,981 | 27.4 | 23,862 | 28.4 |
2005年 | 6,359 | 7.3 | 24,525 | 28.0 | 26,043 | 29.8 |
2006年 | 7,159 | 7.5 | 26,833 | 28.2 | 31,101 | 32.7 |
2007年 | 7,410 | 7.5 | 28,864 | 29.3 | 32,381 | 31.6 |
2008年 | 7,009 | 6.9 | 29,006 | 28.6 | 30,101 | 29.7 |
2009年 | 7,208 | 7.1 | 29,880 | 29.3 | 30,753 | 30.2 |
2010年 | 7,298 | 7.1 | 29,929 | 29.3 | 31,940 | 31.3 |
2011年 | 6,901 | 6.8 | 29,000 | 28.5 | 30,668 | 30.2 |
2012年 | 7,206 | 7.0 | 29,709 | 28.8 | 30,777 | 29.9 |
2013年 | 7,369 | 7.1 | 30,818 | 29.5 | 32,154 | 30.8 |
2014年 | 7,351 | 6.8 | 31,176 | 28.8 | 33,298 | 30.8 |
2015年 | 7,191 | 6.5 | 32,185 | 29.3 | 33,303 | 30.3 |
2016年 | 7,454 | 6.1 | 33,356 | 27.2 | 34,026 | 27.8 |
2017年 | 8,032 | 6.0 | 36,094 | 27.1 | 34,513 | 25.9 |
2018年 | 8,265 | 5.8 | 36,050 | 25.3 | 36,111 | 25.3 |
2013年を境に一施設当たりの人員は減少傾向にあるのが分かります。
よって、人員削減をしているという指摘は当てはまります。
ひとまとめで質が落ちたとは言えませんが頭数が減っている以上、人的なサービスレベルは落ちたと捉える方が自然です。
教育レベルはどうなった?
教育レベルに関しては運営企業により異なりますがクラブビジネスジャパンによると以下のような傾向があります。
- 技術、知識、接遇力など項目を明確にした研修制度の充実を進めている
- 外部の資格認定・教育団体へ研修を外注し効率化を図っている
- ipadやIT機器を活用しスキルがなくても指導・案内が出来るような体制を作っている
- 長時間労働の廃止と働きやすさの改善を進めている
人員が少なくなっても対応できる組織を作ろうとしていることが分かります。
教育レベルが落ちたかどうかよりも人員数に依存しないサービス提供を目指しています。
レッスンインストラクターのクオリティは落ちたのか?
残念ながら比べることは出来ません。
行っているレッスン内容とインストラクターが昔と今ではかなり変わってしまったからです。
昔・・・プロのレッスンインストラクター比率が高かった
今・・・クラブスタッフによる内製化が進んでいる
これだけを見ると質が落ちたのではないかと思えますが必ずしもそうではありません。
何故なら貢献度を計る最も大きな指標である『集客率』は落ちていないからです。増えていることも多いです
これに関しては少し説明が必要なので次の項目を読み進めてみてください。
導入レッスン決定の3要素
- 集客実績の良いクラス
- コンディショニング系とアクティブ系で偏らないようなバランス
- 年齢層や地域性など会員適正に合わせたスケジュール
導入決定の要素は時代の変化に関わらずこのようになります。
もちろん会員の意見は考慮されますがクラブ運営にとってプラスになることが大前提となります。
レッスンプログラム3つの傾向
次に2023年現在の傾向を見てみます。
フィットネスというのは案外流行があるのです。各クラブは上手く取り入れて会員満足度を高め新規入会者を増やそうとしています。
現在のクラブは以下のようなレッスンに力を入れようとしています。
- 短時間で効果のでる高強度トレーニング(HIIT)を取り入れたクラス
- 育成、音楽、コリオ(動きの事)を高レベルで実現するプレコリオレッスンの比率を高めたい
- レッスンの内容とは別に演出効果(音響・映像・照明)を高め体験価値を高めたい
これらは顧客を満足させクラブ価値が上がるものであると運営企業は考えています。
もし、あなたがこのような流れに反発しているのならクラブ側から受けいれてもらえない可能性が高いです。
結論!スタッフとレッスンの質は落ちたのか?答え
- フィットネスクラブがどのような歴史をたどったかを見れば何故今のような運営方法になっているかが分かる
- 1施設当たりの人員は減っているため、コミュニケーションなど人員を要するサービスは縮小傾向にある
- クラブは人員数に依存しない高レベルのサービス提供を模索し取り入れている
- 昔と今ではレッスンスケジュールの構成が変わっているためクオリティの比較は出来ない
- クラブスタッフの行うレッスンだからクオリティが低いというのは当てはまらない
以上が今現在で出せる答えです。内情はこのようになります。
もし、少しでも解決になれば幸いです。
スタッフ研修に関しては勤務時間内に全て行う事が難しく自主的に行わなければ追い付かない事が多いです。研修を行う側の負担も大きいという問題があります。
仕組みの変革により『人員数に依存しないサービス』を目指すのは必然と言えます。