2020年4月を境としてヨガスタジオを取り巻く環境は大きく変わった。
ユーザーの行動が近くのリアルスタジオに通うことからオンライン空間へシフトしたのだ。
正確に言うならばリアルスタジオは残り続けるが縮小した。
代わりにオンライン上に新たなスタジオがポツポツと現れ始めたのが2021年まで一年間の流れだろう。
その中でも Jivamukti Yoga(ジヴァムクティヨガ)インストラクターとして活躍中であり、2021年4月にオンラインスタジオを開設した小川友里さんにインタビューを行ってみた。
多くのインストラクターと同様、新型コロナウィルスにより多くの仕事を失いもがき苦しんだ一年だった。
しかし傾倒しているジバムクティヨガへの思い、支持してくれるレッスン参加者への感謝から一早くオンラインレッスンに取組んだ。
21年4月からは公式HPをオープンさせ活躍の場を広げつつある。
致命的な危機をチャンスに変えた形だ。
ヨガを始めるきっかけからオンラインスタジオオープンまでの話は多くの人に勇気を与えることができるのではないかと思う。
YURI OGAWA公式ホームページ:https://yuriogawa.jp/
オンラインスタジオをオープンするキッカケ
―小川さんは何故オンラインスタジオを作ろうと思ったのですか?
新型コロナウィルスの影響で、もともと所属していた京都市内のスタジオで活躍できなくなったのがきっかけです。つまり仕事がなくなったんですよね(笑)
もしこの様な事態にならなければ今でもそのスタジオに所属していたと思います。
リアルのスタジオでレギュラーレッスンを持つことも大切にしたいので。
ただ、2020年4月の一回目の緊急事態宣言が出された時に突然『来週からないので…』と宣告されました。
そこは法人になりたての小さなスタジオだったので休業の補償もありませんでした。
契約インストラクターというのは、何かあった時にはものすごく弱いんだという事を痛感しましたね。
また、それまで集客は順調でした。しかしコロナ対策でスタジオ定員が減ったことによりレッスンを受けたくても受けられない人がたくさん出てきました。
何とか対応をとりたかったのですが、それはスタジオ側が決めることです。私にできることはありませんでした。逆に言えば人に任せていてはいけないと思ったんですよね。
だから2日後にはオンラインでのレッスンを始めていました。
当時は分からないことが多く手探りの状態でしたが案外スムーズに始めることができたと思います。
幸いInstagramやFacebookを通じて繋がりのある方が数百名いたので集客に困らなかったのが大きいですね。
オンラインであれば定員を気にすることなく無制限に人を集めることができます。
コロナ禍ではありましたが可能性を大きく感じました。
苦労した点は自分がオンラインのレッスンに慣れていないコトでした(笑)
画面越しなのでアジャスト(※ポーズ修正のこと)もできないし、スムーズに伝えるのが難しかったです。
ただ、それは私のスキル不足の問題です。続けていくうちに改善されるであろうとも思っていました。
実際、一年間続けてみて、やれる確信を得ることができました。
ヨガとの出会い
―小川さんがヨガに深く傾倒したきっかけを教えてもらえますか?
私は元々ダンサーをやっていました。
ダンスというのはとても消耗が激しいんです。
自分をケアする方法を探していたところ、ダンスチームの友人に誘われて行ったホットヨガスタジオが最初でした。大阪の心斎橋にあるスタジオです。2010年の事なのでもう十年以上も前のことですね。
でも正直、全然良いとは思わなかったんですよねー(笑)なんでこんな暑いところでやってんの?とか言って!
暑いところでストレッチやってるだけ!みたいな感じ。
今思えば知識がなかっただけなんですけどね。
とはいえ、世の中で良いといわれてるものだから間違いはないんだろうなという気持ちもありました。
面白くないなとは思いつつもケガの予防をしたかったし、体も柔らかくしないといけなかったので。
なのでとりあえずは続けていたんです。
当時は大学生で、ダンスをかなり真剣にやっていました。慕っていたダンサーのプライベートレッスンを受けるために毎年ニューヨークのマンハッタンで勉強していました。
私が取組んでいるジバムクティヨガと出会ったのはその時です。
借りていたシェアハウスに出入りしている人でヨガマットを担いでいる人がいたんですね。
その人がなんとジバムクティのアドバンスティーチャーだったんですよ。
しかも日本人でした。これすごく珍しいコトなんですよね。
私はヨガを始めたばかりだったので、どこか良いところはないか聞いてみたんです。
そしたら『ボクが教えている流派はめちゃいいから行った方がいいよ!』って誘ってくれたんですよね。
実際、ジヴァムクティヨガは最高でした。
いろいろな流派をかじりましたが、ジヴァムクティと出会ってはじめてヨガの本当の良さに気づいたんです。体と心が変わるのが実感できたんです。
『だからヨガはすごいんだ!』って思えるようになりました。
ヨガをやり始めて初期のうちに自分が深く入り込めるモノに出会えて本当によかったと思います。
それからは本格的にヨガインストラクターとして活動することになります。
2017年にはコスタリカで300時間のティーチャートレーニングを終了し、ジヴァムクティの認定講師になることができました。
2020年に渡米して500時間のアドバンストレーニングの予定でしたがコロナ禍で断念しました。2021年中にはスペインのバルセロナで再度挑戦予定です。
Jivamukti Yoga(ジヴァムクティヨガ)について
―ジバムクティヨガについてもう少し教えてもらえますか?
1984年にもともとダンサーであり絵描きとアーティストであったデビット・ライフ氏とシャロン・ギャノン氏によって設立されました。
創始者二人のバックボーンが色濃く反映された内容となっています。
基本はビンヤサスタイルのヨガになります。
ビンヤサとはフローのこと、つまり流れるようにアサナ(ポーズ)を行うのが特徴です。
アーティストでありダンサーが考案したものなのでとても美しいシークエンス(順序)になっています。
ところでたまにビンヤサフローヨガという名前で展開されているクラスがあるのですが、これはフローフローヨガになっちゃうから実はおかしいんですよね(笑)。
フラダンスのフラというのもハワイの言葉ではダンスの意味だから、直訳ではダンスダンスになっちゃう。フィットネスの世界ではあるあるかもしれません。イメージしやすいから別にいいんですけどね(笑)。
で、ジヴァムクティには5つの教義があります
- 非暴力
- 献身
- 瞑想
- 音楽
- ヨガの哲学
アサナで肉体の健康を作るだけでなく、5つの教義を伝えることで心の健康法を身につけるんですね。
体と心が健康になるというコトは幸せになるというコトですよね。
私がジヴァムクティに入り込めたのはこれが大きかったんです。なぜヨガをやるのか?意味は何なのか?すべてが解決されました。
ヨガを学ぶ場所は?
―小川さんは海外のいろんな場所でヨガを勉強されていますが、日本ではダメなのでしょうか?海外の方が有利なのですか?
いや、全然日本でちゃんとした勉強はできますよ(笑)。日本のティーチャートレーニングも受けたことありますがレベルは高いです。
ただ、誰に何をどこで学びたいかが大切だと思っています。
私が学びたかった流派はたまたま日本じゃなかっただけです。日本で出来ない事はなかったけど私は本場で学びたかった。ストイックな選択かもしれませんけどね。
中にはワケが分からずやっている人も多いと思います。
浅かろうが深かろうがやっていれば何とかなるみたいな選択をしている人が多いのも事実です。
日本は文化的にも大事なところをごまかすところがあって、みんなと同じことをやっていれば安心するマインドがある。自信を持って自分の信じたことをやるっていう人は少ないかもしれません。
もちろんそれが悪い訳ではありません。選ぶのはお客様です。
私の場合はやるなら徹底的にやりたい性分なだけなんですね。そのような姿勢に共感してくれる人とやりたいと思っています。
ヨガだから良いのではなく、その思想や哲学まで自分の中で咀嚼してYURIというフィルターを通じて表現したいんです。
オンラインスタジオ開設にあたって
―新しく開設したオンラインスタジオについて教えてもらえますか?
ジヴァムクティヨガ認定講師が運営する少人数制のオンラインヨガスタジオです。
500時間トレーニングが終了すればさらにレベルの高いものが提供できます。
今後試験も受けて、日本で3人目のアドバンスティーチャーにもなる予定です。
特徴はヨガをより深く学べる事です。
というか大衆受けする内容にはなっていません(笑)。
絶対この流派を学びたい、絶対にYURIから学びたいという人のために開設しました。
基本は会員制ですが、定期的に参加できない人でも一般参加が出来るようにしています。
お試しで参加してみて合う人のみ会員になってほしいです。
―オンラインクラス開設にあたって苦労した点は何ですか?
正式にオープンするまでこの一年間は会員制を設けずに募集していました。たくさんのお客様に来ていただき感謝はしているのですが正直トラブルが多かったです。
ルールもしっかり決まっていなかったので、ドタキャンや連絡なし欠席への対応に追われましたね。
何よりも残念だったのは、ヨガで最も大切な習慣化を根付かせにくかったことです。
好きなタイミングでできるのは良いのですが、それではヨガの上達にはなりません。
私もお一人お一人の管理ができません。
せっかく受けていただくからにはこちらも責任をもってサポートをしたいと思っています。
会員制にすることによってこれらの問題は解決できると考えました。
ヨガの深みを継続して伝えることができます。またオンラインであるため、私が海外のどこにいても決まった時間にレッスンを提供することができます。
お客様のためであり私のためでもあるんです。
会員料金
年会費 | 13,200円 | |
グループ レッスン | 5 Tickets (Asana,Study共通) | 11,000円 |
Asana Unlimited (月謝制) | 19,800円 | |
Study Unlimited (月謝制) | 19,800円 | |
パーソナル セッション | 60分(1回) | 11,000円 |
90分(1回) | 16,500円 |
非会員料金
グループ レッスン | 1クラス3,850円 | |
パーソナル セッション | 60分(1回) | 14,300円 |
90分(1回) | 21,450円 |
会員特典
- Online Class / Personal Sessionを既存価格(会員価格)で受講できます
- 会員限定のEvent / Special Classにご招待します
- 会員限定クーポン(25%Off):年2回発行
・Online Classで利用可
・Unlimited会員は”Personal Sessionでのみ”利用可 - アーカイブ視聴可能(視聴期間1ヶ月限定)
レッスン時間
60分~90分
決済方法
- Stripe(カード)、LINE Pay、PayPay、Paypal(カード)、楽天Pay、銀行振込
インタビューを終えて
2021年4月現在、フィットネスクラブやヨガスタジオで活動しているインストラクターの環境は大変厳しいものがある。
レッスン本数は激減し、ひとたび緊急事態宣言が出されれば活動はストップ。最悪スタジオ閉鎖により職がなくなるのはそこらじゅうで起こっている。
そんな中、一部のインストラクターは活動の場をオンライン上に移し、むしろ仕事の幅を広げることに成功している。
リアル空間のスタジオが以前の活況を取り戻すのは当分先になるのは確実だ。数年後にはオンラインスタジオのように新たな市場が成熟してしまうため戻らない可能性だってある。
この様なカオスの状況においては多くの人に共感してもらえる行動をした者が生き残る。
小川さんはコロナで仕事がなくなった2日後にはオンラインレッスンを開始している。
さらに1年間の試行錯誤の末、会員制のビジネスまでスタートさせた。
恐ろしいまでの行動力である。
同時進行でジバムクティヨガのアドバンストレーニングも進めている。ヨガへの情熱は高まるばかりだ。
ボクは数百名のインストラクターを知っているが、ここまで自信に満ち溢れ希望に向かって邁進できるインストラクターを見たことがない。
むろん、その陰では壮絶なる努力と失敗を繰り返しているであろうことは想像にかたくない。
外部環境に身を任せるのではなく、自らの力で逆境をチャンスに変えていく姿は美しく見えた。
最後にインタビューを通じて感じた事を話したい。
小川さんはヨガを続けるために自分がどうすればよいのか、何をすればユーザーはついてきてくれるのかを基準に動いている。つまりビジネスの基本である顧客視点で行動している事だ。
ヨガとはサンスクリット語で『つながり』を意味する。
心と体をつなぐ修行こそがヨガの真髄なのだ。
ヨガを通じて人間としての器を大きくする。そこに人が集まる。
本人に自覚があるのかどうかは分からないが、優れたヨギーニは優れたビジネスパーソンになり得ると感じさせられた。
YURI OGAWA公式ホームページ:https://yuriogawa.jp/